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遠距離恋愛(2)
遠距離恋愛は続かないと言い張る先生。
言い張る根拠は自分を含め、遠距離恋愛をしていた友達もみんな別れたから。
アイツも……?
隆也にも近くの二番ができたりしてるんだろうか?
そんなことを考え出したら、授業どころじゃなくなって。
俺はその日の授業が、何も頭に入らなかった。
隆也とは高一の夏から付き合い始めたけれど、アイツは高二になってすぐ親の都合で転校して行った。
俺たちはお互いにアルバイト禁止の高校に通っているから、会いたくてもお金がないせいで、簡単に会うことができない。
それなりの距離に、隆也は行ってしまったからな。
月に一度会えたらいい方だ。お互いお小遣いを貯めて、交互に会いに行く。
一応毎日メールはしているけれど、話すこともあんまりないからすぐに終わってしまう。
だけどそれでいいって思ってた。
俺はちゃんと隆也が好きだし、そんなことをいちいち気遣ったりするような仲じゃないと思っていたから。
でも……。
『遠くの一番より近くの二番』
先生の言葉が、頭を過る。
「……っ、」
あんな話をされたら、考えずにはいられない。
俺は、久しぶりに電話をかけた。
「もしもし?千秋?電話なんて珍しいじゃん」
「……久しぶり」
あぁ……、隆也の声だ。
「何かあった?」
「別に、何もないけど。お前の声、聞きたいなって」
「おっ、嬉しいこと言ってくれんのな? 俺もお前の声聞きたかった」
少し低めの隆也の声が、心地よく耳に響く。
やばい、涙が出そうだ。
声を聞いただけなのに、まるで隆也が隣にいるみたいで。
触れたい。
声だけじゃあ嫌だ。
今すぐあのおっきな手で俺を抱きしめて欲しい。
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