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遠距離恋愛(3)
「千秋?」
急に黙ってしまったのを不思議に思ったんだろう。
隆也が心配そうに、俺の名前を呼んだ。
「わりぃ、ぼーってしてた。あ、あのさ、次はお前が俺ん家に来る番だよな? ……って、まだまだ先か」
いつもなら、こんなに寂しくならない。ちゃんと、待てるのに。
あんな話を聞いてしまったからだ。不安で、寂しくて、胸が苦しい。
「あぁ。まだまだあっけど待っててな?」
あぁやばい。
早く、早く電話を終わらせないと……。
我儘を言ってしまいそうになる。今すぐ会いに来てって。隆也に今すぐ触れたいんだって。
「うん……。ちゃんと待ってるから。じゃあな」
俺は色々と溢れだす前にさっさと終わらせたくて、携帯を切ろうとした。
それなのに。
「千秋!」って隆也が名前を呼ぶから、俺はまた携帯を耳に当てた。
「千秋?」
「な、に」
「最後に一言言いたくて」
「うん?」
「好きだよ」
「……っ」
「じゃあ、それだけだから。おやすみ」
電話が切られた後、俺はその場に座り込んだ。
だんだんと冬に近づいてる今、肌寒いのは当たり前だけど。隆也がいない寂しさが、より一層俺に寒さを感じさせる。
「寒い」と言えば大きな手を広げて俺を抱きしめてくれていた隆也は、今ここにはいない。
「会いたい」
会いたくてたまらない。
「隆也、寒いよ……」
俺は膝を抱えてうずくまり、涙が溜まったその目をゆっくりと閉じた。
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