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遠距離恋愛(5)

ぎゅうぅぅ。 「ちょ、千秋! く、苦しいんだけどっ」 “首、絞まるってば”と、隆也がバタバタしているけれど、そんなのはお構いなし。 俺は、もっと力を込めて抱きついた。 「何で、いるんだよっ。まだ、先だろ……!」 「千秋、本当に苦しっ。一回離せって、」 けほけほと隆也が咳き込むから、俺は仕方なく手を離した。隆也は、はぁーっと深呼吸をして、俺を見つめると、頬を両手で包んだ。 「やっぱ来て良かった。お前昨日元気なかったじゃん? 会いに行かなきゃずっと泣いてんだろーなって思って。小遣い先にもらって来た」 ちゅっと鼻にキスをして、隆也が俺を優しく抱きしめる。ああ、この腕だって、そんなことを考えた。 「何か不安なことがあったんだろうなって思って、だから好きだよって言ったけど。それでもお前はきっと泣いてんだろうなって」 「隆也」 「ってのは都合のいい言い訳だけど。久しぶりにお前の声を聞いたら何かもう我慢できなくなってさ。抱きしめたくてたまんねーって。もう本当おかしいくらい。正直想いすぎて頭パンクするかと思った」 何だよそれ。 くすくすと、隆也が耳元で笑う。想いすぎて頭がパンクだって? そんなの、俺の方が……。 「お、俺も、隆也に会いたかった……」 滅多に言わない、言葉。 会いたいだとか、そんな甘えたこと言ったことなんてないのに。勝手に、口からこぼれてしまった。 ゆっくりと顔を上げれば、優しく微笑む隆也がいて。 俺は初めて、自分からキスをした。

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