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遠距離恋愛(6)

「千秋からキスとか、可愛すぎてヤバいんだけど」 一瞬驚いた表情を見せた隆也の、頬が少し赤くなる。 照れてる、のかな。嬉しいのかな。 「隆也」 俺は、背中に回していた手を、首へと移動させた。顔と顔の距離が、一気に縮まる。 「ん? どうした?」 「キスして……」 「っく。だからもう、本当お前って……!」 仕方ないだろ? 全然足りないんだよ。隆也が、足りないの。 もっともっと触れ合って。 もっともっと確かめ合いたい。 「隆也、好き」 「あー、もう!」 ねぇ、隆也。隆也も、好きをちょうだい。 もう一度、自分から唇を重ねる。だけど、すぐに唇を離され、頬をつねられた。 なんだよもう。痛いじゃん。 俺は、文句を言って、仕返しをしてやろうと、頬へと手を伸ばした。    だけど、その前に体が宙に浮く。突然のお姫様抱っこ。 「隆也?」 そのままベッドへと連れて行かれ、優しく寝かされる。 「おばさん、近所の人たちとお茶会に行くって言ってた」 「うん」 「お前の姉貴は彼氏とデート」 「うん」 「おじさんは朝からパチンコ行ってるって」 「うん」 「意味、分かるよな?」 隆也の顔がゆっくりと近づく。 合わさる唇。さっきあんな態度を取ったくせに。 ここに来てキスするなんて卑怯だ。ドキドキするだろ。 「うん……」 小さく頷くと、隆也の手が俺の髪に触れた。 「いい?」 「うん……」 俺は、恥ずかしくなって目を逸らした。 ミシリ、とベッドが軋む。隆也が俺の上に覆いかぶさった。 そして俺のおでこに、まぶたに、鼻に、頬に それから最後は唇に、たくさんのキスをくれた。 「千秋、好きだよ」 「んっ……」 数えきれないほどのキスをして、溢れ出す想いを伝え合って。 久しぶりの隆也の温もりに、安心して涙がこぼれた。 好き、好きだよ隆也。何があっても、お前が俺の一番。 俺も、ずっと、お前の一番でいられたらいいな。 END

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