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本当はね(1)
「一人じゃ眠れない……」
「じゃあ一緒に寝よっか」
枕を持って部屋に入って来た僕を、お兄ちゃんは嫌な顔ひとつせずに受け入れてくれる。
「今日はたまたまつけたテレビが怖い話だったもんな。ほら、おいで?」
優しい笑顔を僕に向け、それから手招きをして僕を呼ぶ。
大好きなお兄ちゃん。貴方は、いつだって優しい。
僕が小学生の頃に母親が再婚して、僕たちは“新しい家族”がいる家に引っ越した。
新しいお父さんとは何度か顔を合わせたけれど、新しくできたお兄ちゃんに会うのはその時が初めてで。
嫌われたらどうしようって、それまでずっと不安に思っていた。
だって僕は、何もできないし、一緒にいても楽しくないから。そんな僕が、弟になっていいのかなって。
たくさんたくさん考えて、たくさんたくさん悩んだ。
だけど、そんな心配はいらなかった。
五歳年上のお兄ちゃんは、初めて見た僕に優しく笑いかけてくれて、「これからずっと仲良くしようね」って優しく優しく抱きしめてくれた。
僕には兄弟もいなくて、お父さんから愛情をもらったこともなくて。
大好きなお母さんは、僕との生活のためにずっと働いていたから、甘えることなんてできなかった。
だから、誰かに愛情をもらうのが久しぶりで。
優しく、けど力強く僕を抱きしめてくれたお兄ちゃんの愛情に、思わず涙がこぼれた。
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