120 / 224
本当はね(3)
「ほらおいで。体が冷えるよ」
いつものように、優しい大好きな笑顔が僕に向けられる。とくん、と心臓が鳴った。
僕の、大好きなお兄ちゃん。
ゆっくりベッドに近づくと、自分の方に抱き寄せてくれた。
ふわりと広がるお兄ちゃんの匂い。僕を包み込んでくれる温もり。
「お兄ちゃん」
「ん? どうした?」
「お兄ちゃん……」
「大丈夫、怖くないよ」
「うん、」
好きなんて言わない。お兄ちゃんのこと、困らせたりしない。
だから、もう少しでいいから。
僕を優しく抱きしめていて……。
*****
すーすーと寝息をたてて、腕の中で寝る可愛い可愛い俺の弟。
「お兄ちゃん」と呼ばれるたびに、言葉にできない愛情で胸がいっぱいになる。
俺は、そっと前髪に触れた。
「お前は、いつまで俺を必要としてくれる?」
それまではお兄ちゃんでいられるように頑張るから。
可愛い可愛い俺の弟。
いつまでもこうやって、俺の腕の中にいてくれればいい。
「好きだよ」
起こさないように耳元で囁いて。
それから、もう何度目か分からないキスを、その小さな唇に落とした。
END
ともだちにシェアしよう!