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クリスマスイブ(2)
諏訪部さん、彼女いないって言ってたのに。
嘘だったの? だってさ、下の名前を呼び捨てだよ? 随分と仲良しじゃんか。
いつから付き合ってるの? 一週間前は、俺に過ごす人がいないって言ってたのに。
昨日? 一昨日?
本当はもう、ずっと前から?
そんなことを考えだしたらキリがなくなって。
俺には、小さくなった二人の背中を見つめることしか出来なかった 。
「はぁ……」
やっぱり、由美子さんと過ごしてるんだ。
一緒にご飯を食べて、楽しくお喋りして。
そしてそのまま、朝まできっと一緒に過ごすんだ。
あいかわらず、携帯に連絡は入らない。時計の針は進むばかり。俺の頭の中では、嫌な考えばかりがぐるぐると回っている。
「諏訪部さん……」
あの大きな手で頭を撫でてあげるのかな?
低くてドキドキする声で、好きだよって言ってあげるのかな?
目が合ったら、キス……してあげるのかな?
大切なものを扱うように、大事に、大事に、ぎゅうっと抱きしめてあげるのかな?
「諏訪部さん……っ」
二人のことを考えて、胸が痛んだ。
俺だって。……俺だってさ。
「好き……、」
「桜井くん!」
突然後ろから聞こえた声。
「……ぇ、あ……」
驚いて、咄嗟に振り返る。
「良かった、合鍵もらってて……。桜井くん、何回もチャイム鳴らすのに気付かないんだもん。……そりゃそうか、こんだけテレビの音量でっかくしてたらチャイムの音も聞こえないよな」
「何、で……」
振り向いた先にいたのは、ずっと帰りを待っていた諏訪部さん。
どうして、諏訪部さんがここにいるの?
どうして、バラの花束を? ねぇ、どうして? そんな優しい目で俺を見てるの?
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