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想い、想われ(4)
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「きょーしゅけー、やらぁ」
酒を取り上げると、酔っ払いの尚が潤んだ瞳で俺を見て甘えた声を出した。
何だよ、くそ。可愛いじゃん……。
「やだじゃねぇよ。お前これ何本目か分かってんの?」
まるで犬を撫でるように両手で髪の毛をくしゃくしゃにすると、尚はふにゃりと隙だらけの笑顔を見せた。
それから、モタモタしながら指を二本立てる。
「にぃー」
飲んだ本数を二本と言いたいのかお前は。
「にぃーじゃねぇよ! その三倍だろうが!」
「えへへ」
「……っ、」
さっきからずっと笑ってるコイツが憎い。
憎いと思いながらも、可愛いと好きが勝つんだからどうしようもないのだけれど。
「ふふっ、ビールちょ~らい、」
こんな可愛い顔を、過去に付き合ってた奴にも見せていたのだろうか。
……いや、付き合ってた奴にはまた違う顔をするんだろうな。
腹が立つよ、本当に。
そして、振った奴らにも腹が立つ。
「もう何んだよお前!」
イライラしておでこをパチンと弾くと、尚は「いらい~」と泣きだした。
大して強い力でもないのに、拗ねたみたいだ。
少しだけ怒った顔をして、俺に抱きついてくる。
はぁ、だからお前は酔うとめんどくさいんだよ。
「なーお」
「きょーしゅけのばかぁ……」
「……はぁ、」
そうだよ、確かにばかですよ。
こんなお前でさえ、可愛くて愛しくてたまらないんだから。
自分でも自覚はある。
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