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想い、想われ(5)
「ほら、もう寝よう。な?」
尚を立たせようと手を掴むと、ぴたりと泣き止んで、それからじっと俺を見つめた。
あぁ、始まるぞ。
「きょーしゅけ、だっこ……してぇ」
ほうら、思った通りだ。抱っこじゃねぇよ、まじで。
お前な、自分が思ってるより重いんだぞ?
俺と身長も体格もほぼ変わらないんだから。
「はぁーい、尚くん。自分の身長と体重考えましょうねー。俺とあんまり変わらないんですよー? 毎回尚くんを抱っこして、次の日筋肉痛になる俺を頼むから労ってー」
こうなったら引きずってベッドへ連れて行こうと、両方の手を使って引っ張るも尚は全然動かない。
それどころか、「う~っ」と唸って俺の手を振り払った。
「抱っこがいぃ~、きょーしゅけ、だっこ」
「……っ!」
せっかく泣きやんだくせに、また泣き始めてしまった。
お菓子を買ってもらえないで泣く駄々っ子と同じじゃあないか。
可愛けりゃ何でも許されると思ってんのか、この野郎。
本当、腹が立つ。
分かってるよ。毎回そうだもんな?
抱っこして運んだら、今度は「抱っこしたまま寝るの~」って言って、お前は俺から絶対に離れない。
それを毎回される度に、もんもんとして俺が眠れないってお前は知らないんだろうけど。
朝は朝で擦り寄って来てさ。
酔いがさめてる時にお前が甘えてくるだなんて滅多にないから、寝たふりきめこんで耐える俺のツラさ。
それもお前は知らないんだろうけど。
もういいよ。
俺がずっと耐えてやらぁ。
「ばか尚が!」
スパッと頭を叩き、俺はなんとか尚を抱き上げると、ベッドまで運んだ。
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