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想い、想われ(6)

***** 「ん……っ」 朝になり、重い目蓋をなんとか開けると、隣には当たり前のように恭介が寝ていた。 ひらひらと目の前で手を振ってみるけど、すーすーと寝息をたてて寝ている。 どうやらまだ、夢の中みたいだ。きっと、しばらくは起きないはず。 そっと近づいて、胸元に擦り寄った 。 恭介の体温と心音が心地いい 。心にゆっくりと幸せが広がる。 俺はいつも通り、恭介の背中に手を回した。 恭介が起きるまでの、大切で特別な時間。 「……っ、」 いつまで続くんだろう……。 ふと、そんなことが頭を過ぎった。 恭介に恋人ができたらもうやめるだなんて思ってるけど。 そんなことできるのかな? 恋人ができるのがもし明日だったら? 今日、この後だったら? 「……ぁ、」 考えてみたら、何かが刺さったみたいに胸が痛くなった。 「……っ、」 今日だとか、明日だとか、そういうことじゃない。きっとそれが一カ月後でも一年後でも、感じる痛みは同じだから。 そんな簡単なもんじゃない。そんな、小さな想いじゃないの。 「……ひ、ぅ」 好きで、好きで、誰にも渡したくなくて。 だけど、自分のものになって欲しいと、言うこともできなくて。 それでも大好きで。それはきっと、何があったって変わらない。 たとえ同じ恋愛観の奴が見つかっても、俺の気持ちはいつだって恭介に向いてるだろうから。 恭介が、いい。 「……すき」 聞こえないように、小さな小さな声で、初めて想いを口にした。

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