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けんかするほど仲がいい(1)
「あーもう! 分かんねぇ!」
放課後の教室。
しんとしたそこに、俺の叫び声が響き渡った。
期末テスト前に勉強を教えてやるからと居残りさせられた上に、全然分からなくてイライラが募るばかり。
「途中で投げ出すなよ。こんな問題簡単だろ?」
教えると言った張本人の達哉も、そんな俺にイライラしているのが分かる。……ううん、イライラというより呆れてるって方が正しいかな。
「うるせーばか! ハゲ!」
俺はシャーペンを机に叩きつけた。
そもそも、達哉が俺に勉強を教えるとか言い出すから悪いんだ。達哉に見られているから、ただでさえ勉強ができない俺の手が余計に動かなくなっている。
「あ? ばかはお前だろーが。つか俺はハゲてねぇ!」
「うるせぇハゲ!」
「……っ、てめぇ、」
達哉と顔を合わせる度に飛び交う言葉は「ばか」か「ハゲ」。自分でも何をやっているんだろうって思う。だけど高校に入って達哉と知り合ってから毎回こんな感じだし、今更そんな態度を変えるなんてことはできない。
「はぁー。せっかく教えてあげてるのにハゲ呼ばわりかよ。お前は救いようのないばかだな」
「まずお前が俺をばかにしたんだろ。こんな問題も解けなくてすみませんね。それに俺、お前に教えてなんて頼んでねーし」
「はぁ? 誰かが教えねぇとお前分かんねえだろーが! 今度の期末で赤点取ったら夏休み補習なんだぞ? 分かってんのかお前」
「うるせーな」
「あーはいはい。余計なお世話でした。すみませんね。あーあ、本当にもうやってらんねーわ」
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