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けんかするほど仲がいい(2)
あ……。完全に怒らせてしまった。
いつもの喧嘩の時とは明らかに違う達哉の表情に戸惑う。でも、普段からなかなか素直になるのが難しい俺には、咄嗟に謝ることなんてできない。
そうして何も言えずにムスッとした顔をした俺に、達哉は持っていたプリントを投げつけると、ばんっと強くドアを開け教室から出て行ってしまった。
教室に残されたのは俺、雅行と親友の悠太だけ。
「……はぁ、ったくもう。どうしてお前はさ、“達哉、ここ分かんないから教えて?”って、ただそれだけの言葉が言えないの?」
隣に座って俺と達哉のやり取りを見ていた悠太が、困った顔で俺を見つめる。それから慰めの意味を込めてなのか、俺の髪の毛をくしゃくしゃにした。
「だ、だってただでさえ問題できなくて恥ずかしいっていうのに、あんなに達哉の顔が近くにあるんだぜ? 心臓壊れるって……」
うう~と唸って顔を覆うと、今度は頭を撫でてくれた。
「はぁ……、これを達哉に聞かせてやりたいよ、本当に。なぁ雅行、お前どうすんの?」
「どうすんのって? ……何が?」
「達哉と付き合ったらお前が絶対受けなんだぞ? ツンツンしてないでたまには可愛くデレてみろよ」
「つ、付き合っ……」
言われた言葉に、体温が一気に上がった。頭の中をキラキラした妄想が流れて行く。放課後の帰り道、隣には当たり前のように優しい顔をした達哉がいて。一緒に帰ることは今までと変わらないけれど、いつもより近い二人の距離。
肩と肩がぶつかって、それから──。
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