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けんかするほど仲がいい(3)
俺と達哉が付き合うなんてことはありえないけれど、もしも付き合うことができたならどんな感じなのだろうか。
そのまま、手を繋いだりすんのかな? 照れる俺に達哉が、き、キスもして……。うっわ、何それめちゃくちゃ恥ずかしい。それから、照れて黙る俺に達哉が聞くんだよな。俺のこと好き? ってさ。
そんなこと、聞かれなくたってもちろん俺は達哉のこと好きだから、それを伝えようとするんだけど……。目の前には優しく俺を見つめる達哉がいるわけで、やっぱり答えられなくて。そんな俺にもう一度達哉が、俺のこと好き? って聞いてきて、それで俺のドキドキが……!
「む、無理だってば! 俺は好きなんて言えねぇよ! キスもできねぇよ!」
バンっと、机を叩き、それから俯せになった。
自分で妄想したくせに、胸がキュンキュンしてる。だって、達哉が俺のこと好きだって。
考えただけでさ、そんなのもう、もうさ、幸せすぎるだろう?
「……おい、妄想する前に達哉と仲直りしろよな」
だけど、少し冷めたようにそう言う悠太に一気に現実に引き戻される。
……そうだ、妄想してる場合じゃあない。
ちらっと、顔を上げて悠太を見つめる。
彼はそんな俺を見てため息をつくと、立ち上がって散らばったプリントを拾ってくれた。
「ありがと……」
お礼を言って、差し出されたプリントを受け取る。
「俺には言えるのにね」
「……。」
そこを突かれたら痛い。俺だって一応はちゃんとお礼が言える子なんだから。でも、相手が達哉になると、どうも感謝の気持ちよりも先に照れとかそう言った感情があふれ出てくるだけであって。
「ちょっと練習してみ? 俺が達哉だと思ってさ」
「え……、」
「“達哉、ここ分かんない。教えて?”って、まずはそれから」
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