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けんかするほど仲がいい(7)
「……っ」
「なぁ、雅行」
「な、に」
「今、お前にキスしたいって言ったらどうする?」
「え……」
さっきまでのにやけ顔はどこに行ったのやら。
俺を見つめる達哉の顔は、見たことないくらい真剣で。
……ねぇ、キスって本気?
達哉は俺のこと好きなの?
「ぷっ」
でもその沈黙も一瞬。真剣な表情だってすぐに崩れた。目の前の達哉は、俺の反応を見て笑っている。
「……え、」
何が、どうなってる?
「冗談だから!」
ぽかんとする俺の頭を、達哉がそう言って撫でた。
「はぁあ?」
冗談って、それこそ冗談だろ。
「まさか、本気にした?」
「……っ、」
本気にしたかって?
そんなの、あんな顔で好きな人に言われれば本気にするに決まってるじゃんばかハゲ男。
それにさ、俺のこと抱きしめてるみたいに密着してる時点でいつもの達哉とは違うんだから、余計に本気にするだろ?
俺の気持ち、ばかにしやがって。
達哉の胸元を、ぎゅっと握りしめた。
いっそのこと言ってみようか? キスのこと、本気にしたってさ。俺がそんなこと言ったら、コイツだって感付くかもしれない。
「本気にした」
達哉を見上げ、小さくそう呟いた。
「え?」
「……っ、」
何で、……何でそんな顔をするの?
「嘘に決まってんじゃん……。さっきの仕返ししただけだから」
あぁやっぱり無理だよ。気持ちを知ってもらおうだなんて。
もし告白した時も、こいつがこんな困った表情を返してきたら絶対に立ち直れない。
あぁ、言わなければ良かった。
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