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ストーカー続編(4)
「あ、橘、愛花ちゃん見たい?」
「いや、いいわ」
携帯の画面を押しつけるようにして俺に見せてくる相川の頭をそう言って叩いた。
それから黒板の上にある時計を見る。
次の時間までもう二分か。
片宮のところに行く時間はないな。
もう一度、俯せになって寝ている片宮へと視線を移した。
その時、教室のドアが勢いよく開いて、その音に驚いたのか、片宮が顔を上げた。
ばっちり視線が合う。
片宮は肩をすくめて、照れたように笑った。
あぁ、こういう時はいつもの片宮だ。
俺は嬉しくなって、笑い返した。
だけど、タイミングを読めない相川に肩を叩かれ、俺は片宮から視線を相川へと向けた。
「なぁ、次の時間自習だって」
「はぁ?」
相川が指さす方向に振り向けば、黒板には汚くて大きい字で、自習と書かれていた。
それを見た瞬間、反射的に腰が上がる。
俺は片宮の席へ急ぐと、片宮の手を掴んだ。
驚く片宮の手を引き、椅子から引き離す。
そのまま何も言わせず引っ張って、教室を出た。
「橘くん……?」
「何?」
「何って、どうして、」
「んー? 一緒にサボろうかと思って」
掴んでいた手を離し、改めて握り直す。
手首じゃなくて、ちゃんと指を絡めて。
「二人だけになりたくない?」
顔を覗き込んでそう聞けば、また照れたような顔をする。
「……なりたい」
その一言を聞いて、俺は手を握る力を強めた。
そして、一番近くの空き教室に入った。
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