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ストーカー続編(9)
その夜、片宮からたくさんメールが送られてきた。
その件数に驚くくらいのメール。
内容はどれも“好き”ばかり。
どうやらずっと送れなくて、保存していたものを一気に送ったらしい。
こういうところも、本当可愛いな。
一つずつ、同じような内容のメールを開けては眺める。
この好きを打つのにも時間をかけたんだろうなと思うと、頬がゆるゆるになってしまう。
今の顔は最高に気持ち悪いってそう思いながらメールを見ていると、新着メールが届いた。
「……ん?」
片宮からだ。
また“好き”かな?
そう思って開いたら、予想外の内容に驚いてしまった。
「……っ、」
《電話は、しないね。声、聞きたくなるけど、聞いちゃったら、会いたくなるもん。》
可愛い可愛い片宮からの可愛い可愛いメール。
俺はもうキュンキュンが止まらなくなって、枕に顔を埋めた。
「卑怯だぞ」
どんだけ好きにならせるつもりだよ。
「なんか悔しいな、」
こうなったら、俺だって。
俺は片宮の番号を入力すると、緩む口元を押さえながら、通話ボタンを押した。
どんな反応するかな?
驚くだろうな。
それからは?
「……もしもし?橘くん?」
「もしもし」
なぁ片宮。お前ももっと、俺にときめけばいいんだ。
「声聞くと、会いたくなるって?」
「うん、」
「じゃあ、俺が会いに行けばいいんじゃね?」
「……えっ、」
「俺も今、片宮の声聞いて会いたくなった」
チャリ飛ばすから待ってろと、そう言うと、小さな小さな震えた声が聞こえてきた。
「嬉しい……っ、」
ちょっとコンビニ行ってくると親に一言そう言って、俺は自転車に乗った。
夜風を浴びて走りながら、ふと、そのうち俺がストーカーになるかもって考えて、おかしくなって笑った。
END
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