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不思議な飴玉(3)
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「はぁ……」
さっきから、ため息ばかりがこぼれる。
俺は机の上にある飴玉の入ったガラスの容器を、コンコンと指でつついた。
『付き合うって言ったら長期間よね?ごめんなさい。何でもって言ったけど、長期間人を操る魔法は使えないの……』
『一日限定ならできるわ。この飴玉を食べさせたら、その日一日は何でもあなたの言うことを聞いてくれる。ただし、一日といっても二十四時間じゃなくて、日付が変わるまでね』
『これでいいかしら? 飴玉はいっぱい入ってるから、毎日食べさせれば結果的に長期間になると思うし……』
『あ、でも一つだけ注意があるの。さっき一日限定って言ったわよね? だから飴玉を食べさせても次の朝になったら効果はなくなってる。そしてあなたの願いを叶えた時の記憶も……』
おばあさんの言葉が、頭の中ををぐるぐる回る。
なんだか意味が分からなくなってきた。
結局はあの人が、おばあさんだったのかも分からない。
最後はナイスバディのキレイな姉ちゃんになって帰って行ったし。
「んー……!」
俺は髪をぐしゃぐしゃに掻いた。
「どうしよう」
試すか、試さないか。
頭に浮かぶのは大好きな西川の顔。
普通に「付き合って」って言える関係なら良かっただろうに、西川も男だからそうはいかない。
この飴玉を使わなきゃ、一生無理に決まってる。
「西川……」
考えると胸が苦しくなり、俺は机に俯せになった。
その時部屋のドアが勢いよく開いて、口の悪い姉貴が入って来た。
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