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不思議な飴玉(7)
弁当を食べ終わると、俺は飴玉の入った容器を取り出した。
「西川」
「ん?」
「昨日知り合いに飴玉もらったんだ。食べない?」
「飴玉ね……。もらおうかな?」
震える手でなんとかフタを開けて差し出すと、西川が一粒取り、ゆっくりと含んだ。
「美味しい?」
「美味しいよ」
にこっと優しく微笑まれ、俺の心臓が今までにないくらいにうるさく動きだす。
ごめん。
西川、ごめんね。
俺が今からする行為は、完全な裏切り行為だ。
西川の気持ちは、無視することになってしまうけど。
お願いだから、少しだけ付き合って。
俺の願いを、叶えてください。
「西川」
「どうした?」
「抱きしめて……っ」
いきなりすぎるかな、とも思ったけど、して欲しかったから。
時々頭を撫でてくれるその手で、ぎゅっと抱きしめて欲しかったんだ。
西川への、初めてのお願い。
俺は言った後、なんだか恥ずかしくなって目を閉じた。
抱きしめてなんて、こんな機会じゃなきゃ言えないもの。
「広瀬の顔真っ赤。可愛いね。いいよ、膝においで。抱っこしてあげる」
「……っ」
ぽんぽんと、西川が俺の頭に触れる。
ゆっくり目を開けると、また「可愛い」と言われた。
「前からがいい? 後ろからがいい?」
「えっ」
「抱きしめ方だよ。向き合ってがいいか、後ろから抱きしめられるのがいいか、好きな方選んで」
「ま、前から……っ」
抱きしめ方とか聞かれるなんて、そんなこと思ってなかった。
あぁもうどうしよう。
ドキドキで死んでしまいそうだよ。
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