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不思議な飴玉(11)

「広瀬、どうした?」 「ごめ、ん……」 俺の勝手なお願いで、西川にこんなことさせて。 最悪だ。自分が、嫌になる。 今なら、まだ引き返せるよね。 記憶がなくなるからって、こんなこと頼むべきじゃなかったんだ。 「西川……、もうやめて。しなくていい…」 俺なんかじゃなくて、大切な人としなきゃ。 だから、 だからもうしなくていいよ……。 俺は、西川の胸をぐっと押した。 しなくていい。 俺のこんな勝手な願いは、叶えなくていい。 だけど、西川は俺のお願いを聞いてくれなかった。 「いまさら止められると思う?」 「え……」 お願いは、何でも聞いてくれるはず。 今までずっと、そうだったでしょ。 飴玉だって、食べてるんだ。 食べてるから、こんなことになってしまったのに。 どうして? 俺は、やめてって言ったよ。 「ばかだなぁ、広瀬は」 「飴玉で俺に何でもお願い聞いてもらうんだろ?」 「抱きしめるのもキスも頼んだじゃん」 「何? セックスには罪悪感があったの?」 頭が、真っ白になった。 どうして西川が、飴玉のこと知ってるの? いつから? いつから知ってたの? 知ってたのに何で? 唇が乾く。 心臓が壊れそうなくらいに早く動いている。 体が震える。 もう、友だちとしても仲良くできないかもしれないな。 だけど、西川は、最初のお願いの時みたいに「可愛い」って言って笑った。

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