163 / 224
不思議な飴玉(11)
「広瀬、どうした?」
「ごめ、ん……」
俺の勝手なお願いで、西川にこんなことさせて。
最悪だ。自分が、嫌になる。
今なら、まだ引き返せるよね。
記憶がなくなるからって、こんなこと頼むべきじゃなかったんだ。
「西川……、もうやめて。しなくていい…」
俺なんかじゃなくて、大切な人としなきゃ。
だから、
だからもうしなくていいよ……。
俺は、西川の胸をぐっと押した。
しなくていい。
俺のこんな勝手な願いは、叶えなくていい。
だけど、西川は俺のお願いを聞いてくれなかった。
「いまさら止められると思う?」
「え……」
お願いは、何でも聞いてくれるはず。
今までずっと、そうだったでしょ。
飴玉だって、食べてるんだ。
食べてるから、こんなことになってしまったのに。
どうして?
俺は、やめてって言ったよ。
「ばかだなぁ、広瀬は」
「飴玉で俺に何でもお願い聞いてもらうんだろ?」
「抱きしめるのもキスも頼んだじゃん」
「何? セックスには罪悪感があったの?」
頭が、真っ白になった。
どうして西川が、飴玉のこと知ってるの?
いつから? いつから知ってたの?
知ってたのに何で?
唇が乾く。
心臓が壊れそうなくらいに早く動いている。
体が震える。
もう、友だちとしても仲良くできないかもしれないな。
だけど、西川は、最初のお願いの時みたいに「可愛い」って言って笑った。
ともだちにシェアしよう!