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不思議な飴玉(12)
「お前がさ、変なおばあさんと話してんの見てたよ」
「え……」
「通りでさ、広瀬のこと見つけて。声かけようと思って近づいたら、おばあさんの荷物持ち手伝い始めるから。ああいうことさらっとやっちゃうあたり、本当にいい奴だなぁって、そう思ってこっそり後を付けてた」
西川は、俺の涙を親指の腹で、そっと拭ってくれた。
それからいつものように、優しく頭を撫でてくれる。
どういうことなのかな。
俺はこんな最低なことをしてたのに。
西川は怒ってないの?
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
「最後はナイスバディの姉ちゃんになって帰っただろ? 俺は目の前で見た光景が信じられなくてさ。広瀬じゃなくて、そのおばあさんの後を付けることにした。そしたら不良に絡まれてて」
西川は、そのまま俺の頭を撫でながら、話を続けていく。
だから今は、ちゃんと話を聞かなきゃって、そう思った。
「魔法使えばいいのに、あっさり捕まって逃げられなくなってたから、俺が助けてやった。そしたらお願いは? って聞くから」
「お願い……?」
「そう、お願い。お前と同じこと答えた。好きな人と付き合いたいってね。そしたらあの飴玉をくれた」
俺と……同じ飴玉……?
「俺、聞いたんだよ。『この飴玉の効果を知ってる人が食べたらどうなりますか』って。そしたら『効果はない』って言われた。じゃあ広瀬には使えないなぁって思ってたら、お前が俺に使うんだもん。すっげぇ嬉しかった」
西川が、俺に……?
俺に、使おうとしてたの?
「俺もね、広瀬が好きだよ。お前は俺が飴玉のせいでお願い聞いてくれてるんだろうって思ってただろうけど違うよ。全部俺の意思でしたことだから」
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