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記念日(5)

「葵ー……」 だいたい急に熱とか意味分かんねぇし。 昨日まで普通だったじゃん。 “起きないかなぁ”なんて考えながらぷにぷにと頬をつついてみる。 「起きろー……」 小声でそう呟いてみるも、葵は相変わらず夢の中。 昨日体がキツくて、あんまり眠れなかったのかもしれない。 起こしちゃダメか。 「でもやっぱりつまらねぇー」 俺は仕方がないから、椅子に座って葵の机を漁ることにした。 「几帳面だよなぁ……」 きれいに立てられた教科書。 部屋に来る度に思ってたけど、いつもきれいに整理されてる。 だから勉強もできるのかな。 ノート見せてもらうこともあるけど、字もわりと丁寧だし、板書の仕方がうまいと思う。 俺は勉強得意じゃないけど、葵のノート見ると分かることあるし。 「ふはっ、可愛すぎるだろ」 少し視線を逸らすと、俺の写真を見つけた。 体育祭でリーダーをやった時のだ。 やたら写真撮らせてって言ってたのは、このためだったのかな。 「やべぇって、」 こういうの、なんかすっごい嬉しい。 恥ずかしさもあるけど、目に付くところに置いてあるってのはさ、ちゃんと考えてくれてるってことだろ? 今まで気づかなかったってことは、俺が来る時は隠してるってことなのかな。 だって体育祭は、数ヶ月前に終わってるし。 どうせならもっとキメ顔して写れば良かったかも。 見てる葵もドキドキするくらいに。 「ふっ、」 そんなことを考えて、恥ずかしくなった俺は、今度は机の中を開けてみた。

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