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記念日(7)

***** 「……ん、」 体が揺れているような気がする。 それから、名前を呼ばれているような気も。 ぼんやりとした意識の中、その行為がとても迷惑だと思った。 寝ているんだから邪魔をしないで。 お腹空いてないし、何も飲みたくない。 「んんっ、」 身を捩り、起こさないでとの意思を示す。 けれど、それでもやめてくれない。 仕方がないと、不機嫌になりながらも重い目蓋を開ければ、すぐ目の前に大好きな人の顔があった。 「葵……っ」 まだ視界はぼんやりとしているけど、好きな人の顔を間違うはずがない。 「絢斗……?」 僕を起こしたのは、絢斗なの? でも、どうして? どうして、絢斗がここいるの? お見舞い……? 休んでたから心配で? 状況がいまいち分からなくて、ぼーっ絢斗を見る。 すると、ゆっくりと体を起こされ、「ごめん!」と言って抱きしめられた。 「絢斗?」 意味が分からないよ。 何のことを話してるの? ごめんって何……? お見舞いに来たんじゃないの? って、もっと状況が分からなくなる。 ひとまず抱きしめ返した方がいいのかな。 そう思って、絢斗の背中に手を回した時、耳元で言われた言葉に体が固まった。 「記念日のことごめん。お前のスケジュール帳見た」 「……え?」 「俺、お前の気持ち考えてなかった。傷つけたよな? ごめん」 絢斗の言葉が、頭の中をぐるぐる回る。 ごめん? 記念日? 僕のスケジュール帳? 「あ……、」 絢斗の言葉が理解できた時、急に力が抜けて。 彼の背中に回した手が、だらんと落ちた。

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