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君との永遠(1)
「ねぇ、先輩」
「あ?」
「先輩は“永遠”って信じる?」
突然、恋人の彼方がそんなことを言い出した。
勉強が分からないと言うから、わざわざ家にまで来て教えてあげてるというのに。
何なんだ?
“永遠”とか意味分かんねぇ。
「そういうのいちいち語らなくていいから。さっさと問題を解け、問題を」
俺は近くにあったペンを取り、テキストを叩いた。
お前が今向かうべき問題は、“永遠”を語ることじゃないだろ?
それなのに、彼方は問題を見ることなく、シャーペンを持つ俺の手を、強く握りしめた。
「俺ね、“永遠”とか“ずっと”とか曖昧な言葉だし、嫌いだったんだよね」
「はぁ?」
ますます意味が分からなくなる。
コイツは何が言いたいんだ?
眉間にしわを寄せ、じっと見つめると、彼方はくすっと、でも寂しそうに笑った。
「彼方……?」
「でも嫌いとか言ってて信じなかったら、先輩との未来も否定することになると思うんだよ」
「え……」
俺との未来を否定する……?
否定って、どういうこと……?
「か、なた……?」
急に不安になって、俺は彼方の腕を掴んだ。
どうして、そんなことを言い出した?
どうして、そんな目で見る?
何が言いたい?
俺は、何を言われる……?
「……っ、」
彼方はさっきみたいに寂しそうに笑って、その上に自分の手を重ねると、そのまま俺を引き寄せた。
「俺ね、曖昧なの信じたくないんだ」
「え……?」
「だって、信じたところで“永遠”なんて無いに決まってるんだから」
ぎゅっと、抱きしめる力が強くなる。
俺も同じように彼方を抱きしめる力を強めた。
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