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もう一度(6)
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初めてりょうさんを見た時、笑顔の温かい人だと思った。
照れながら、“陽呂”って俺の名前を呼ぶ姿が可愛らしいと思った。
一緒に過ごすうちに、気付いたらいつの間にか好きになっていて。
男だとかそんなの関係なく、この人を自分のものにしてしまいたいと、そんな気持ちを抱くようになってしまった。
その笑顔も、心も、小さな体も、何もかも全てを。
『りょうさん、俺のこと好きでしょ』
一か八かの賭けにでた。
何となく、りょうさんも俺のこと気にしてるって、感じられることがあったから。
これで反応がなかったら、笑って誤魔化すつもりだった。
だけどその言葉に、驚いて真っ赤になるりょうさんを見て、やっぱり間違いないと確信した。
案の定、『付き合おっか』という俺の言葉に、りょうさんは頷いてくれて。
飛び上がるくらい嬉しかった。
それからは何度も食事をして、デートもたくさんした。
お互いの家にだって何度も行った。
抱きしめて、キスもした。
だけど、一度だけ、あまりにもりょうさんが可愛すぎたから、俺は苦しそうにしているりょうさんを無視して、深い深いキスをしてしまった。
漏れる吐息さえも惜しくて。
鼻での呼吸じゃ追いつかず、酸素を求めて口を開く度に無理矢理舌をねじ込んだ。
少しの間さえも唇が離れてしまうことが、どうしても嫌だったから。
とにかく夢中で求めてしまい、りょうさんを怖がらせてしまった。
きっと、それのせい。
その後のキスから、りょうさんはぎゅうっと目を瞑るようになってしまった。
肩にもすごく力が入ってた。
本当はすぐにでも体を繋げたかったけれど、そんなりょうさんを見てると、キス以上の行為はまだできないって思った。
大事にしたかったんだ。
とても、大切な人だから。
あふれでる“好き”の想いも口に出してしまったら何をするか分からないって、たくさん我慢をした。
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