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もう一度(7)
りょうさんは、もともとあまり分かりやすい感情表現をしない人だった。
嬉しい時は可愛い笑顔で笑ってくれるけれど、それだけ。
何をされたら嬉しいだとか、そういうことは言ってくれないから。
俺が一方的にガツガツいっても嫌われるだろうなって、そういう不安はあった。
どうしたらいのかなって、悩む日もあった。
そのうち、だんだんとりょうさんが笑わなくなっていった。
りょうさんが気持ちを伝えていた唯一の笑顔も、俺が奪ってしまったんだろう。
それから、俺が無理矢理引き止めてるんじゃないか、りょうさんは別れたいって言えないんじゃないかって、考えるようになった。
『りょうさん……』
『俺といたら疲れる?』
『別れよっか……』
手放したくないけれど、あなたのために。
俺以外に笑わないでほしいけれど、でもりょうさんの笑顔を奪いたくなくて。
これからも一緒にいたいけど、でも。
りょうさん、今までありがとう。
りょうさんが静かに頷いた時、俺の心は一気に空っぽになった。
どこかで、別れたくないって言ってくれることを期待してたんだ。
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