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空気が不足してる(3)
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昼休み。
弁当を食べ終えて窓の外を眺めていると、楽しそうな笑い声が耳に入り、視線をその声の主へと向けた。
千尋だ。
「……っ、」
楽しそうに笑い合ってるのはクラスの女子数名。
何なんだアイツは。
俺の前ではあんなふうに笑わないくせに。
「くそ、」
見たくないのに見てしまう。
声が、耳に入ってくる。
(何だ? 胸が苦しい。)
しばらくの間、目を離せずにいると、席に座っていた千尋が立ち上がった。
それから教科書を手に取り、喋っていた女子数名に手を振った。
向けられていた背中は見えなくなり、千尋と視線が絡み合う。
今日も質問かよ。
俺とは、質問以外に話すことは何もないのか。
「……うぜ、」
(すっげぇモヤモヤする。)
(何かあるだろ、何か。)
(……は? 何かって、何だよ。)
(俺は、千尋と話したいの?)
「……はっ、……んだよ、それ」
俺は、千尋と仲良くなりたいのか?
いや、違う。
仲良くなりたいわけじゃない。
それよりも、もっと。
─────もっと?
「……っ、」
そう思った瞬間、心臓がうるさく鳴り出した。
千尋が、一歩ずつ近づいてくる。
来てほしい。
……来てほしくない。
呼吸が苦しい。
(まただ、)
(空気が不足してる。)
「ねぇねぇ」
俯く俺に、千尋が話しかける。
お前は今、どんな顔してる?
今日は、一段と呼吸が苦しい。
(空気が足りない。)
(全然足りないよ。)
「昴くん、今日はね……」
「千尋」
「え?」
「ちょっと来て」
机に置かれた教科書を閉じると、俺は千尋の言葉を遮った。
驚く千尋の細い腕を掴み、そのまま隣の空き教室へと連れ込んだ。
それから鍵を閉め、死角になっているところで、千尋を思いっきり抱きしめた。
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