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けんかするほど仲がいい続編(1-3)
「……いちゃいちゃ、してるじゃん」
「いや、してねぇだろ。今だって拒否したじゃん」
「……だって、それは、」
ちらりと、達哉に視線を移すと、唇を突き出し拗ねた顔をしていた。
……そんな拗ねた顔されても、できないもんはできないもん。
「まだ慣れないよ……」
俺は、ソファーに置いてあるクッションを手に取り、ぎゅうっと抱きしめた。
達哉から顔が見えないように、クッションに埋めて隠した。
「だって俺、隣にいるだけでけっこうヤバいもん」
体の体温が上がっていく。
赤くなった顔は隠せても、耳までは隠せないなと、そんなことを考えた。
「俺だってヤバいよ?」
「……え?」
「色んなところがはちきれそうになるし」
「……俺の言ってることは、そーゆーことじゃないんだけど」
「冗談だよ、」
達哉は、ははっと乾いた笑いをして、それからもう一つのクッションで俺の頭を叩いた。
痛い、と文句を言って顔を上げれば、一瞬で唇を奪われる。
「……ん、」
ちゅっと、リップ音を立てて、何度かキスをされた後、今度は鼻を噛まれた。
「何で、鼻……」
「んー? なんとなく?」
「何だそれ」
噛まれたところを指先で撫でていると、その隙にまた唇を奪われた。
「なぁー、雅行。やっぱいちゃいちゃしてーよ」
「う……」
「早く慣れろバカ」
“そうじゃなきゃ、俺、不安になるよ”
最後の言葉は、はっきりとは聞こえなかったけれど、しょんぼりとしてそう言った達哉に胸がキュンと鳴った。
「ねぇ、達哉」
「あ?」
「手、繋いで見る?」
抱きしめられるのは恥ずかしいけれど、手くらいならきっと大丈夫だろう。
映画の間なら、なんとか乗り切れそう。
でもそれが間違いだとすぐに気づかされた。
「雅行、手汗すげーよ」
「黙って見ろよハゲ」
「だから俺はハゲてねぇよばか」
「……っ、」
いちゃいちゃに慣れるまでには、もうしばらくかかりそうだ。
END
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