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けんかするほど仲がいい続編(2-5)
おばさんに水をもらいに行くと、もう帰りなさいと言われてしまった。確かにけっこう熱があるもんな。雅行だって、ちゃんと寝なきゃだし。
「あと、五分したら帰ります。水だけ、持って行かせてください」
「珍しく風邪なんか引いちゃってねぇ。もし移っちゃったら、達哉くん家に迷惑かかってしまうからね。でも、来てくれてありがとうね」
なんとかあと五分の許しを得て、俺は雅行の部屋へと戻った。体をそっと抱き起こし、コップを口元に運ぶ。ぼーっとしたまま、こくこくと水を飲むと、満足したのか、またふにゃりと笑った。
「じゃあ、俺もう帰るな? 早く治して明日なんとかして来いよ?」
かばんを手に取りながらそう言うと、笑っていた雅行の表情が一気に曇る。
「やだ」
「え?」
「帰っちゃ、やだよぉ……」
「雅行……?」
おおお、雅行がかなり素直になっている。
本当すげぇな、熱の力。
本音を言えば、色々とやりたいけど、おばさんに帰るって言ってるし。ごめんな雅行。
「俺、もう今日は帰らないと」
「ちゅーして、」
「え?」
「ちゅーして、」
ああもう反則だろ。
雅行、可愛すぎるよ。
俺はまた荷物を置いて、優しく雅行の頭を撫でた。
「じゃあ一回だけな、」
「……んっ、」
目を瞑る雅行の唇に、自分のを軽く合わせた。
「もっかい、」
「え?」
「もっかい、ちゅーして、」
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