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幸せになろうよ(2)
小学三年生くらいの頃、両親が離婚した。
原因は父さん。
浮気したあげく、浮気相手との間に子どもができてしまったんだと。
そのことが分かってすぐに、父さんは家を出て行った。
母さんは何も悪くないのに、何度も俺に謝っていた。お父さんは帰って来ないからお母さんと二人で頑張ろうねって、強がってた。
でも知ってるんだ。
一人で泣いていたって。
夜中トイレで目が覚めた時、リビングで泣いてる母さんを見てしまったから。
あの小さくなった背中を見たら、俺も小さいながら迷惑はかけられないと、そんなことを思ったのを覚えている。
事情を知っている周りからは同情の目を向けられ、毎日が本当に苦しかった。
だけど、一人だけ変わらずに接してくれる奴がいた。
同じクラスの高田だ。
高田は同情とかじゃなく、純粋に俺を心配してくれていた。
他の奴らとは違った。
それがとても嬉しかった。
だから誰にも言えない思いも、高田だけには言うことができた。
真剣に俺の思いを受けとめてくれて、いつだって欲しい言葉をくれた。
そんな状況だったし、高田は優しいし。
好きになるのも、時間の問題だった。
他に欲しいものは、何もない。
高田さえいてくれれば、って本気でそう思ってた。
それだけで良かったのに。他には何もいらなかったのに。
篠原が、それを全部狂わせたんだ。
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