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幸せになろうよ(6)

次の日、俺は朝から一人で屋上にいた。 心地よい風が、優しく俺の頬を撫でる。 ぽかぽかと暖かい日差しの中、寝ころんでずっと空を眺めていた。 「どうして、」 俺は父さんの子に生まれたのだろうか。 父さんは浮気して出て行ったけれど、母さんと仲が悪かったのだろうか。 どうして、高田と仲良くなってしまったんだろう。 「はぁ……、」 どうして、篠原と出会わなければならなかったんだろう。 「……っ、」 俺はそしてこれからも、一人ぼっちなんだろうなぁ。 いつまで苦しめばいいのか。 こんな運命だと始めから決まっていたのか。 「一人は嫌なのに……」 空の向こうには何があるのだろう。 今、俺が屋上から飛び降りたら、誰か悲しんでくれるのかな。 「母さん……」 小さくなったあの背中を思い出す。 母さんは、絶対に泣くだろうな。 こんな俺のことを、生き甲斐だと言ってくれたもの。 「柳瀬も……?」 柳瀬も悲しんでくれるかな。 柚樹って俺の名前を呼びながら、泣いてくれるのかな。 あーあ……。 どうせこうして一人になるのなら、一度も人の温かさを知らないまま一人になりたかった。 そうしたら、こんなに苦しまなくて済んだはずだ。 「柳瀬……」 俺はどうしたらいい?
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