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俺はちらりとロボットの方を見た。
端正な横顔は何を考えているのか伝わってはこない、全くの無表情だった。
いや、何も考えていないのか。
考えるわけ、ないか。
朝食に顔を戻すと、ぐいっとオレンジジュースを飲み干した。
俺が食べ終える時間を見計らって、部屋にやってきたメイドが食器を下げていった。
ソファに腰かけ、新しく届けられた本を手に取る。
日が暮れるまで俺は本を読み耽る。
そう、毎日。
毎日。
一人で。
太陽が昇り、降りていく。
窓から入る日差しが伸びて、いつものように白い壁をオレンジ色に染めていった。
濃くなった影が足元に近づいてきた頃、俺はふいに本から顔を上げた。
あいつは何もない中空を見つめたまま、椅子に座っている。
俺は本をテーブルに置くと、近寄ってキーボードに言葉を入力した。
『さみしい』
打った途端、猛烈な羞恥が込み上げてきて、急いでDeleteボタンを連打する。
しかし、スピーカーから僅かに揺れる金属音が発せられた。
「あるはずのもの、あってほしいものが欠けていて満たされない気持ち。…………大丈夫です」
見上げた俺の目はまるで、縋るようだったと思う。
「私が居ます」
「……っ!」
そいつの正面に回り込み、指先で頬に触れてみる。
固く、ひんやりとしていた。
その視線は目の前の俺を通り越して、遠く、何かに想いを馳せているかのようだった。
「俺のこと、見てないくせに」
そんな悪態を吐きながら、俺は目尻の涙を指で拭って、笑った。
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