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*** 「坊ちゃま、中学校のお友達がお見えです」 ある日メイドに呼ばれていくと、玄関に同じクラスの男子生徒が立っていた。 日に焼けた顔を顰めて、窮屈なのか学ランの詰襟を外そうとしている。 名前は確か……、山……なんとか、そうだ、山科(やましな)だったと思う。 陸上だかバスケだか、何か体育会系の部活動に入っていたはずだ。 もちろん、友達なんかじゃない。 「これ、先生がどうしても本人に渡すようにって」 俺の姿を認めると、渋々といった口調で山科は学生鞄からプリント用紙を一枚、取り出した。 「ああ」 俺も視線を逸らしながらそれを受け取る。 「じゃあ」 「な、なあ!」 すぐさま踵を返す山科に、俺は咄嗟に声をかけていた。 自分から誰かに声をかけるなんていつぶりだろうか。 「……なに?」 「なあ、検索ロボット、持ってる?」 「持ってるけど……」 振り返った山科が怪訝そうに俺を見やる。 「そいつって、質問以外のことも喋る?」 俺の問いかけに山科は僅かに眉根を寄せた。 「喋るかよ。それってバグかなんかじゃねぇの? 喋るのか、おまえの」 「あ、ああ。検索の答えのあとに一言、余計なことを」 俺の答えを聞いた山科が突然、「プッ」と噴き出した。 「なんだそれ。でも、面白いな」 「だろ? 俺、初めてでよくわからなくって。しかもそいつ、もう動かないんだ。それなのに執事服着てて……ん、なんだ?」 夢中で話していた俺の顔をじっと凝視する山科に、俺は戸惑いながらその目を見つめ返した。 「初めて見た」 「え?」 「勉強ばっかのいけ好かない奴かと思ってたけど、灰島(はいじま)ってそんな風に笑うんだな」 「……!」 目を見開いて、ヒュッと音がするくらい息を呑み込んだ。 「……たまには学校来いよ」 山科はそんな俺に苦笑しながら軽く手を挙げる。 「じゃあ、またな」

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