17 / 41

9

*** 明日の朝には回収業者の人間がやってくる。 相変わらず虚空を見たままのそいつに近づいて、俺はキーボードで文字を入力した。 『役立たず』 チリッと胸の奥に火がついたような熱さを感じた。 『馬鹿』 俺は言葉を追加した。 熱は痛みに変わり、胸の中をどんどん広がっていく。 そして、最後の言葉を打とうとして、指を止めた。 俺はそいつの正面に回り、両肩を掴んだ。 ***** その唇が、私の目の前で何度も何度も同じ形を描いた。 「―――! ―――!」 しかし、私にはわからないのです。 だめです、ちゃんとキーボードで入力してくれなければ。 あなたは激しく首を横に振っている。 「―――! ―――!」 そして、私の首元に縋るように抱きついてきた。 胸と胸とが接触している。 「―――! ―――!」 あなたの鼓動を感じる。 「―――! ―――!」 だめです。 「―――! ―――!」 私にはわかりません。わからないのです。 「―――! ―――!」 あなたの肩が小刻みに揺れている。 「―――! ―――!」 私の首筋が何かで濡れる。 「―――! ―――!」 私には……無理なのです。声では伝わらないのです。 「―――! ―――!」 私の目には映ってました。ずっとずっと。 あなたの笑顔も泣き顔も。ずっと見ていました。 あなたが一人で孤独に耐え、頑張っていることを知っています。 「―――! ―――!」 腕を解いて私の瞳を覗き込むあなたの頬が濡れている。 「―――! ―――!」 頬の雫を思い切り手の甲で拭っている。 ああ、この腕が動いたら。 この手であなたの涙を拭うのに! あなたを思い切り抱き締めるのに! 「―――! ―――!」 顔をくしゃくしゃに歪め、あなたは何度も何度もその言葉を繰り返す。 「―――! ―――!」 自分の胸をそんなに叩かないでください。 私はいつだってあなたのそばに居ます。 それでもまだその唇は私に何かを伝えようと必死に動いている。 ああ……ああ! 「―――! ―――!」 あなたの涙を見ていると、胸の奥に……温かなものが生まれてきます。 ああ! これが、伝わるってことでしょうか。 「―――! ―――!」 あなたの言葉が、想いが……流れ込んできます、私の胸に。 初めてです、こんな感覚……! 「―――! ―――!」 ええ、ええ! 私も、です。 「私も、ずっと、これからも、あなたが―――」 ***「③How to convey love」終わり 検索ロボットの答えはweblio辞書を参考にさせていただきました。

ともだちにシェアしよう!