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⑤‐3

「……ありがとな」  あなたははにかんだ顔を上げた。 「昼飯でも、食うか」 「先輩、よかったらこれもどうぞ」  ガサガサと菓子パンの袋を開け出したあなたに、僕は足元に置いていたカバンからアルミホイルで包んだおにぎりをふたつ取り出し、そのひとつを手渡す。 「お、サンキュ。おまえが作ったのか?」 「ええ」  頷きながら、僕はあなたの隣に腰を下ろす。目の前の鉄柵が高く伸びて、天に突き刺すように見えた。 「あれ、おまえ、ここどうしたんだ? 汚れてるぞ?」  あなたは僕のシャツの腹に付いた赤黒い染みを指差した。 「……ああ、なんでもありませんよ、朝食のケチャップでも飛んだのでしょう」  僕はアルミホイルを剥きながら、頬に鷹揚な笑みを湛えた。 「そっか」  あなたは再び、おにぎりを頬張る。しかし、ふいに動きを止め、僕の顔を隣からじっと見つめてきた。 「なあ……。俺、これからもこうして、おまえと飯、食いたいな……」  白い息を吐きながら、あなたはまた、哀しそうに笑った。 ――あなたの作りだす希望と絶望の狭間に、僕はいつまでもいつまでも、捕らえ続けられるのでしょう?  優しいあなたは、僕をズタズタに傷つけていることに気づかない。  あなたの愚かしさを愛してしまった僕は、終わりの見えないこの苦しみから、二度と、逃れられない。 「もちろん、僕も」  僕の微笑みにあなたは安堵しきった顔つきになり、目を細めた。 「あー、うまかった、だけど……」  あなたは寒空に向かって満足げに両腕を伸ばしながら立ち上がると、鉄柵に背中を預けた。  僕はその顔を、痛みと恍惚の入り混じった瞳で、見上げる。 「……このおにぎりの具、何の肉だった?」

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