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⑦桔梗の夢
「……本当に、これでよろしかったのですか、殿」
松明を持った古参の家臣が、馬上の私を振り仰いで口元を引き締めた。
周囲は怒号にまみれている。
馬のいななき、刀が交わる甲高い音、次々と放たれる矢の雨の中、逃げ惑う者たちの断末魔の叫び。
明け方、突然の襲撃に慌てて武具を持ち出した敵方が必死の形相で応戦しているが、私の手勢のほうが圧倒している。
私は目の前の寺に視線を向けた。そして、独り言のように呟く。
「これで、よいのだ……」
錆びた鉄の匂いのする、冷えた朝の空気を胸の奥まで吸うと、大声を発した。
「はよ、首を持てい!」
私の命に奮起した屈強な家臣たちが敵の抵抗を突破し、寺の中へ押し込んでいく。
すると、すぐに奥から火の手が上がり始めた。
(……もうすぐ、もうすぐです)
私は目蓋を閉じて、その揺らめく火影を瞳の中に閉じ込めた。
(これであなたは、私のもの……)
私の胸は悦びに打ち震える。
(私もすぐに参ります……、愛する信長様)
***「桔梗の夢」終わり
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