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烏丸イトという男②

「まあ、ほら……成るように成るだし」 苦し紛れに出てきた俺の発言にオミの目つきが鋭くなる。 やべ、また間違えたかも。冷や汗をかきながらも、咎めるようなその視線から逃れるように明後日の方向に目を向けた。 だって、今すぐニートを辞められるかと言われたらそんなものはノーに決まっている。当たり前じゃないか、この悠々自適な生活を自ら放り投げるなど出来るはずがない。 確かにこの先の未来に若干の…否、大分不安はあるけれど、そんなものでどうにか自立出来るのであればとっくに俺はニートなど辞めているし、というかそもそもニートになんてなっていない。 自分を正当化するつもりなんてないけれど、でもやっぱ俺がこうなっちゃったのって環境のせいもあると思うんだよねえ。 ほら、こういうのなんていうんだっけ。 「お前このままだと歳食っても一生温室育ちのお坊ちゃんだぞ、いいのか?それはちょっとヤバいんじゃねえの?」 「あっ、それ。温室育ち。……えっ、俺温室育ちかな?」 「ばか。イト、確かに成るようになるとも言うけど、為せば成るともいうんだよ。でも為せば成るけど為さねばならない。意味わかるか?」 まるで小学生を相手するように首をかしげるオミに眉間にしわを寄せる。 「おいおい、馬鹿にするなよな。意味くらいニートにだってわかるよ」 「……はぁ。イトはさ、本当に成るようになるでいいの?逆に言うと成るようにしかならないんだけど、それで自分の人生満足できる?」 オミが呆れたように言う。 そこにただの呆れだけじゃなくて他のものが混じっていることを俺はよく知っているからこそ、何も言えなくなってしまうのだ。

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