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丹羽圭祐とは⑥
「丹羽さん、…筋肉すごいですね…」
いやまあ確実に違うよね。今言うセリフではないよね。
いつもは服の下に隠れている身体も今や明かりの下に露見されている。そしてその見事な筋肉に逃げた俺を許してほしい。
丹羽さんは茹でタコのような顔のまま照れたように触ってみます?とはにかんだ。いや、あんたも多分それ今言うセリフじゃないよ。多分、ってか確実に今ではないよね、本当に。まあ、触るけど。
「うわ、すごいっすね……」
「やっぱこの仕事してると筋肉つきますからね」
「俺もそこまでむきむきなれるかなー」
「烏丸さんも鍛えればいい筋肉つきそうですけどね!」
この辺とか、素質良さそうですし。とさわさわ腹に触れてきた丹羽さんについ腰が跳ねた。
「く、くすぐったいです……」
「っっっすみません!!!」
「い、いえ、」
こんなくだらないやりとりをしながらも痛いほど主張する丹羽さんの息子がどうしても視界に入ってきてしまう。
今までのどこに興奮する要素があったのか、じっくり聞き倒したいところだったがそうもいかない。っていうか、なんだよこの状況。
息を荒くさせ、俺を見つめるその瞳は情欲に濡れている。口では雑談をするものの今にも襲いかかってきそうな、どこか獣のそれを感じとって背筋がぞわりとするけれど、丹羽さんはそれを必死に抑えるように拳を強く握って唇を噛んでいた。
まるでお預けを食らった犬だ。よだれを垂らす獣は、良しが出るまで決して動けないでいる。
「丹羽、さん。あの、」
「ごめんなさい、俺本当に、違くて、…イトさん、嫌いにならないで、」
誤魔化すこともせず眉を寄せて、ごめんなさい。と乞うように言う丹羽さんに、ぷつん、と、自分の中の何かが切れた音がした気がする。
潤んだ瞳に、俺の理性はやられたのだ。
「丹羽さん」
彼の頬に滑らすよう両手を添える。
目に涙を溜めながら、じっと俺を見つめる丹羽さんの唇に、キスをした。
「っ、」
「我慢、しなくていいですよ。俺なんかでよければ、」
全てを言い終える前に、気がつけば視界は反転して体はベッドの上に沈んでいた。
天井をバックに丹羽さんが視界に入ってーーそう。押し倒されたのだ。
瞳孔が開いた丹羽さんの表情に、犬…というか、獣…?そう感じて、そしてもう一度唇に噛み付くようなキスを落とされたのだった。
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