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第3話
教室がザワつく。
外野のうるささにも気づいていたが、あいつと交わった視線が絡み合って、解くのに時間がかかった。
「え、なになに?何キレてんの紀田くん?俺、なんかした?」
状況を飲み込んだあいつは好戦的な瞳を光らせ、ニヤつきながら俺に向かって問いかける。
「毎時間毎時間、ゲラゲラ大声で笑っててうるせえんだよ」
「えー、でもそれ俺だけじゃなくなーい?」
間延びした声に何が面白いのか、あいつの周りのヤツらも手を叩いて笑い始めた。
「紀田くん、部活で調子悪いからって、俺に責任押し付けないでくれるー?」
「ちょっと星野!お前…言い過ぎ」
俺の部活のことを持ち出してきた星野に俺は本気で殴りそうになった。部長が間に入ってくれてよかった。
「でもほんとの事じゃん?まぁね、部活頑張ってて偉いと思うよ?でもさ、調子悪いの俺のせいじゃないよね?」
一触即発の危険な空気に、陸上部の部長が割って入ると先ほどより真面目な顔で星野が答える。
「…たしかに今のは紀田も悪かったかもしれん、でも俺たちはもうすぐ大会なんだ。少しピリピリしてるのもわかってくれ」
「ふぅん…。まぁちょっと言いすぎたかな。紀田くん、ごめんねー」
「別に。お前を静かにさせようとした俺が馬鹿だった」
「はあ?」
俺を呼び止める部長の声がしたが、叩くように教室の扉を閉めると日誌を持って部室へ走った。
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