｢あー、うまかった！｣ 嬉しそうにスプーンを置くと両手を合わせて｢ごちそうさま！｣と言う星野。チャラ男にしてはきちんとしていることも最近知ったことだ。 ｢あー、星野。口に生クリーム付いてる｣ ｢え？｣ 慌てて唇を舐める星野。でも舌先は生クリームとは反対の方向を舐めとった。 ｢逆｣ ｢んー｣ ただ生クリームの位置を探っているだけのその行為なのに自分の顔が赤くなるのがわかった。 カフェのオレンジ色の照明も相まってなんだか…。 ｢あー！もう！こっちだって言ってんだろ！｣ ｢えっ？｣ 星野の口の端に付いた生クリームを強引に親指で掬いとった。 ｢えっ、ちょ、匠…？なに…｣ ｢何ってお前がモタモタしてるから！｣ ｢え…ねえ、今俺の生クリーム舐めた…よね｣ ｢はっ？別に友達なら普通だろ！｣ 星野の困惑の表情で自分のやってしまったことに気づく。 なんとなくの流れでそのまま星野の口の端に付いていた生クリームを舐めてしまった。 だって、別に汚いもんじゃねぇし、あえてナプキンで指拭いたら逆に星野に悪い。 なんていうのは後付けだ。 きっと去年の俺ならこいつの口に付いた生クリームなんて汚いと言っていたはずだから。 ｢ほら、もう映画行こう｣ ｢ちょ、匠待って｣ 会計の為にレジまで星野を連れて歩くと周りの女子の視線が刺さる。 さっきの大声はやはり響いていたようだ…。