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第13話
「えー俺知りたいー。いいじゃん、夢の話なんだし。何も今から実践しようぜなんて言ってないんだから」
「はうっ」
「桜田今何か言ったー?」
「う、ううん。紀田くんがいいなら僕めっちゃ喋りたいんだけど!」
まさに発作のように謎の言葉を発してからやたらと目を光らせている桜田。
これはもう手遅れだな…。
「けど桜田、今日1人なのか?友達と来てるんだろ?そっち放っておいていいのか?」
「あっ、萌えのせいで忘れてた」
「もえ?」
「えっ?あ、星野くんは気にしないで」
星野は「ふぅーん」というと本当に意味がわからなかったらしく頭を掻いた。
俺といえば桜田との会話に時々挟み込まれる単語に慣れっこになってしまって、今こいつが何を考えているのかすら、おおよそ予想がつく。
桜田は今もさり気なくニヤニヤしている。
「実は今日、嶋 くんと映画観にきてて多分嶋くんトイレに行ってるんだよね」
嶋とは陸上部時代、俺と一緒に部活に入っていた奴で、棒高跳びをやっていた。高校に上がると同時に俺より先に部活は辞めてしまって最近では関わることも無くなっていた。
「嶋ー?桜田ちゃんと嶋のセットって意外」
「けど桜田と嶋って幼なじみなんだろ?」
「うん!あれ?紀田くんに言ったことあった?」
「時々話に出てくるしな」
しかも桜田は幼なじみの嶋まで妄想の対象にしているのだ。俺が口が堅いからとベラベラ喋ってくるが、嶋に知られたら縁が切られそうなレベルの妄想をしているようだ。
「えー、ちょっと俺のいない所で2人で喋んないでよー」
「んんんんん!」
「桜田ちゃん何唸ってるの?」
「…気にするな…。桜田の発作みたいなもんだ」
「えー、なんか2人でわかりあっちゃってる感じがやなんですけどー」
「ひょえっ」
星野が俺の頭を抱え込むように抱きしめてきて、桜田が可愛らしい顔に似合わない、ヘンテコな悲鳴をあげた。
「あっ、嶋ー!」
「紀田と星野?」
「嶋くん!どこいってたのさ!」
「…トイレ行くって言ったろ?」
「聞いてないよ!」
「…」
頬を膨らませた桜田の頭を無言で嶋が撫でていて、星野がそれを見て目を輝かせた。
「2人って付き合ってんの!」
「は?」
「えっ?ちょ、ちょっと星野くん!僕は自分でそういうのとかないから!!」
「えーそうなのかー?お似合いなのにー。それに嶋と桜田ちゃんが付き合っちゃえば、匠との時間邪魔されないしー」
「ひょっ…」
撫でられたまま、桜田は本日何度目かの悲鳴をあげた。
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