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第17話
「え、これどーしたの」
黒髪短髪イケメン女子陸上部部長の笹川が驚き半分笑い半分の声で尋ねてきた。
「見りゃ分かるだろ。嫌がらせ」
「シーブリーズめっちゃ垂れてる…くくっ」
体育で球技大会の練習も兼ねて、バスケのメンバーで練習をすることになり、更衣室で着替えて教室に戻ると星野が俺のシーブリーズをカバンから取り出し垂らし始めたのだ。
「喧嘩でもしたわけ?おしどり夫婦が」
「夫婦じゃねぇし、おしどってもねぇよ!おいこら星野!これちゃんと拭けよ!」
「なーんだ。夫婦漫才かー」
「だから夫婦じゃないって言ってるだろ!」
大声に隣のクラスからも人が集まってきたが、俺と星野だと分かるとニヤニヤ笑いながら教室に帰ってゆく。
「俺のせいじゃないしー」
「ちょっとちょっと。どうしたわけ?紀田くんの言うことならホイホイ聞いてたのに。しかもこんなアホな嫌がらせ、アンタしかしないわ」
「ほんとだな。お前幼稚園児以下だぞ」
「笹川ちゃんと匠で夫婦漫才でもすればー?」
自分の席にダラリと座ると自身の細くて綺麗な指から爪にかけてを意味もなく弄っている。
「自分の零したのくらいふけ」
「いったい!だから俺そんなん記憶にないしー」
「あーあ、反抗期?」
「高3で反抗期とか精神年齢の低さ…」
よくわからないが全くこいつは動く気配が無いし、何かに腹を立てているようだ。
とにかく何にかはわからないが、俺が何かをしたんだろう。
「俺なんかしたっけ?」
「べつにーー?」
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