23 / 59
第23話
「マジで言ってる?」
「…いや…俺さ、人を好きになったことがないから分からないけど…多分お前のこと、特別に思ってる」
星野はぽかーんと口を開けたまま。
俺の返事を聞いて揺れる瞳に「かわいい」と思った。
周りの喧騒もどこかへ言ってしまって、本当に俺と星野しか世界に存在してないんじゃないかと思うほど、静かに時が流れる。
「え…じゃあ俺たち付き合うの?」
「星野がそうしたいならそうすればいいと思う」
「匠!そんな『今日の昼飯は食堂にしようぜ』みたいなノリで…」
戸惑ってしまった星野は本当に犬みたいにぐるぐる回り始めた。
「俺は今まで通りに一緒にいられるなら、付き合ったって付き合わなくたってどっちでもいい」
「…っ…匠…」
俺は思ったことを口にしただけなのにな。
星野は感極まってしまったのか、目に涙を浮かべている。
「じゃっ、じゃあ付き合いたい!あと俺の事は名前で読んでほしい」
「じゃあ付き合おう。あとお前…悪いんだけど下の名前知らない」
「えっ…マジで言ってる?」
「本気だ。あや…ナントカって名前だろ?あや…あや…」
「彩人 !!!」
「彩人な」
オレが名前を呼ぶと満足そうに頷いた。
ともだちにシェアしよう!