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第25話

「た、くみ…え?家?」 「うん。今母さん東京の兄貴のところ行ってるから家誰も居ないんだよね」 「は?匠何言ってんの?」 父さんは元々単身赴任で東京に住んでいて、兄貴も東京の大学の近くにアパートを借りて住んでいる。 父さんがこっちに居れれば一番いいのだが、父さんのお陰で俺達はかなり裕福な生活が出来ているわけだし、私立の高校に通うことが出来ている。ありがたいことだ。 「匠ほんとおかしい…。匠に限ってえっちなお誘いなんて…あと10年しないとそんなお誘い来ないと思ってた…」 「なっ、何がえっちなお誘いだ!!!俺はそんなつもりじゃっ!」 「匠声でかいよ、くくくっ」 慌てて周りを見回すと、バツの悪そうな顔をした流星と目が合う。俺と家の方角が同じ流星は俺達の後ろを歩いていたようだ。 「あっ。いや…聞くつもりは全く無くて…ははは」 「流星…」 いっそ気持ち悪いとでも罵ってくれた方がせいせいするのに。 気まずそうに道の真ん中で立ち止まったままお互い目を合わせられずにいた。 「あー…てか二人…って付き合ってたんだね…」 「先週からだけどな…」 「あっそうなんだねー」 「…」 結局会話は終わり。また静かになった。 会話中も目を合わせることはなく、お互い母親に叱られている子どものようだ。 「何この空気ー!やめてよねー!俺達はお互い好きだから一緒にいるだけだし!悪いことしてないんだから!そんな悪い事しました。みたいな顔しないでよね、匠」 「彩…」 「流星くんが俺たちのことキモいと思うのも自由だけどさー、俺の匠のこと傷付けないでよね!」 「キモいなんて思ったことない!!!!!」 さっきまでの縮こまっていた流星はどこかへ行ってしまって、いつもの存在感のある流星が帰ってきた。 自分自身も思ったより大声を出してしまったことにびっくりしているようで、3人の時が止まった。 「流星?」

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