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第31話
「えっ、ちょ…どうしようか…とりあえずこれ被ってて」
そう言うと彩は俺の頭に普段から上着にしていて先生からよく注意を受けている、蛍光色のパーカーを被せてきた。
「あー星野。じゃーなー。気が向いたら俺たちゲーセン居るから来いよー」
「一生行かねぇー!」
フワッとした感触の直後に少し前まで彩がつるんでいた奴らの声がした。
奴らに見えないように隠してくれていたようだ。
「匠…こっちおいで」
「え…どこ行くの…」
「大丈夫。空き教室」
パーカーを被せられているせいで、目の前は真っピンクと床しか見えない。
途中で誰と会うかも分からないからか、パーカーを被せたまま、俺の手を引いて歩かせる。
「匠…なんで泣いてるの?…もしかして…聞いてた?」
音が響かないように扉を閉めると、繋いだ手はそのままに片方の手を俺の背中に回した。
全身から彩の体温を感じる。
「ごめ…っ。聞く気はなくて…たまたま…」
「俺のこと迎えに来てくれたんでしょ?匠、悪いことしてないじゃん。なんで謝るの…。俺は匠が何に対して悲しい気持ちになってるのか知りたいんだよ」
「匠…女の子じゃなくていいのかなって…。もしかして…俺のこと…」
彩の喉の鳴る音がしたけれど、続けて言った。
「俺のこと、ほんとにすきじゃないのかな…って」
「…匠。怒るよ。…匠のこと、不安にさせてたなら謝る。ごめん。でもさ、俺をもうちょい信じても良くない?」
俺を抱く力が強くなる。痛いほどに。
痛いほどに、彩の気持ちが伝わる。
俺だって「ほんとに俺のこと好き?」なんて彩に言われたら、それこそ本当に怒るだろうし。
ここは素直に謝ろう。
「…ごめん」
「はい、お互い様。ね、不安になったらぎゅっとしてよ、今みたいにねー。…悪いけど、不安で泣いてる匠、最高にかわいいよー。やばい」
「コロス!」
「ちょっ、痛い痛い痛い!!!でも照れてる匠もかわいいっ」
彩の上半身を並んでいる机の上に押し倒し、顔面をこねくりまわした。このクソイケメンが!!!
「えこらこらー!ブスになったらどーしてくれんの?責任取ってぇ嫁に来てよねー!」
「うわムカつく!!現時点で自分がイケメンだと思っている所が既にムカつく!!ブッサイクにしてやる!」
そして俺たちは互いをくすぐりあっていたら、30分ほど経ってしまい、慌てて家へ向かう事になったのだった。
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