草野は真面目な上に人に気を使う。 誰かに仕事を与えてやらせるなんて、と思うと自分でやるしか無かったんだろうな。 ｢もう今年から家庭科無いもんなぁ｣ ｢そうだねぇ。もう受験生だもんね｣ たわいも無い話しをしながら草野に言われた食材をキッチンへ運び、夕飯に使われると予想される材料も冷蔵庫へ閉まった。 ｢スパゲッティって何作るんだ？｣ ｢ペペロンチーノだよ。自分本位で悪いけど、流星が1番好きなメニューだから…｣ 少し照れたような表情をしたあと、慌てて眼鏡を押し上げた。 ｢俺もそれ好きだから嬉しい。彩も洋食ならなんでも好きだし喜ぶよ｣ ｢そっか！ならよかった！それでなんだけど紀田には、僕がペペロンチーノ作ってる間にスープとサラダを用意してもらいたんだ｣ サクサクと物事を勧めていく草野の性格がよく現れている。 まるで料理番組かと突っ込みたくなる程に綺麗に食材を並べる。 …なんだ。人に仕事、与えられるんじゃないか、草野。 ｢食材はこんな感じで。味付けとかも紀田の好きなようにやっちゃっていいよ｣ ｢おっけー。了解した｣