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第39話

「差出人は名前を書く決まりなんだ。ファンクラブ内ではそれが浸透していて、名前が書かれてない差し入れなんて貰ったことがなくて。最初は書き忘れかと思ってたんだ。でも、いつまで経ってもその差出人は名前を書いてくれない。1週間に1度、手紙と一緒に俺の好きなブランドのハンカチとか小物がセットで入れられてるんだ。手紙の筆跡からそれは同一人物が差し入れしてくれてるんだってわかったよ」 綺麗なおもいでをなぞるように流星は白い天井を見上げる。 照明の光の加減か、それともほんとうに泣きそうなのか、流星の瞳が潤んでいる。 「それが2ヶ月続いて、もう耐えられなくなったんだ。俺のことを純粋に応援してくれてる、心の綺麗なその子に会いたくなった。だから待ち伏せしたんだ」 「え!?だって、草野は部活中に差し入れしたって…」 「俺が足くじいちゃって、練習に出れなかった時にこっそり。そしたら真面目そうな男の子でびっくりしたよ、最初はな」 「俺だって、次の日声かけられてびっくりしたよ。確かに体育館覗いたら流星の姿見えなかったけど、トイレとかだろうと思って油断してたからな…」 この小説、2人が主人公の方がいいんじゃないかなと思うくらい、素敵な話だ…。そんな盛りだくさんな内容なら月刊誌の漫画に掲載出来るくらいだぞ…。 「そうそう。次の日にな、俺が声かけたんだ。『この手紙と差し入れくれたの、君でしょ』って」 「俺、至近距離の流星かっこよすぎて、倒れちゃったんだよな〜」 「びっくりしたよ、急に倒れちゃうから」 ふふふと幸せに笑う2人に目をやったあと、ソファに座る彩に視線を移した。みると彩も俺を見ていた。 確かに俺たちは2人のように素敵なエピソードがある訳では無いが、嫌いあっていた2人が付き合うことになったなんて、なかなかいい話じゃないか??

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