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第45話
「…やだ…」
「ん?」
「…彩は体目当てだったのか…?」
「はぁ?」
パッケージも何も無いピンク色の容器からトロトロと液体を出し、手に馴染ませる。
怖いと思った。
何も怖くなんてなかったのに。
そんなにやりたいならやれよって、思っていたのに。
一回や二回、何も減るもんじゃないって、女子じゃあるまいしって。
…そう思ってたんだけどな。
無表情をきめて、俺を脱がせて準備している彩を見て凄く嫌な気持ちになった。
準備しろって突き放さないで、準備してくれている時点で優しさなのかもしれないけれど。
「…体目当てだったらとっくに犯してる」
「…ごめん」
せっかく出して温めたその液体を洗面器の水で洗い流してタオルで手を拭いた。
「匠、泣かないで」
「…っ、泣いてなんか無い」
突然抱きしめられて驚いた。
体が暖かくなった。
そしてああ俺はこうして欲しかったんだと、わかった。
「いいから。やるんなら早くやれ」
「…急に可愛くないこと言うんだからー」
予備として持ってきていたであろうタオルで顔を覆われた。
タオルが濡れているから、やっぱり涙を流したのかもしれない。
「脱げる?」
「脱がせろ、はやく」
見えていると恐怖を感じるとわかったので、顔を覆ったままにすることにした。
「はいはい」と仕方なそうに返事すると彩は俺のズボンに手をかけた。
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