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第55話
頑張れって…。
「何笑ってるん?匠」
「いや…頑張れってさ…くくっ。何か…草野かわいいな、ふふっ」
ついつい笑いがこみ上げてきて、口を手で抑えたが、彩が返事をしてくれない事に気づきそっと彩の方を見やった。
「匠のばか!こんなにかわいい彼氏が横にいるのにほかの男の子のこと褒めるわけ?」
んもーうとねっとりとした声を上げて、俺をベッドへ投げ込む。
中学生の時から俺が使っているベッドはいままでにない勢いで倒れてきた俺に悲鳴を上げた。
スプリングの酷い音がした。
いくら部活をやめて筋肉量が減ったと言ってもわずかばかりで、それなりに鍛えているので安いベッドでは受け止めきれなかった様だ。
「匠…すき」
驚いている俺の上に覆いかぶさる彩にまたもやベッドが悲鳴をあげた。先程の言葉の割に怒っては居ないようだ。
「俺も」
「ばか、ちゃんと言ってよ」
「俺も彩が好きだ」
強要したくせに、俺が素直に言葉にすると急に赤くなる。
ほんとに心の底からかわいいと思う。
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