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第58話

「んッ…」 「匠…?」 「な…に…」 「気持ちい?」 「えっ…」 必死でシーツを掴み、唇を噛んで声を漏らさないように務める。 さっきの準備の時に声を出してしまったのは初めてだったからで、不意打ちされなければ声は出ないと思っていた。でも今も「声を出してはいけない」と自分に念じてどうにか堪えられているくらいで、ずっとこうして堪えるのもそのうち無理がくるだろう。 「ほら、こっち見て」 必死過ぎて目をギュッとつぶっていた。それが余計に快感を連れてきているとは気づかずに。 目を開けば彩が見えることはわかっている。 俺は思ったよりこいつが好きなようだ。 さっき気づいたが彩を見ながら前立腺を弄られると余計に気持ちよくなってしまう。 それなのに目を開くことなんて出来るかよ。 「ねえ。匠。こんなに口噛んで…痛くない?赤くなってる」 「ふ…」 突然指で唇をなぞられて驚く。 一瞬触られて終わりかと思いきや、二本の指で俺の下唇をふにふにと緩くつまみ始めた。 「なにして…」 「可愛い。ふわふわしてる」 「意味わからん…あんっ」 「…もしかして、声我慢してる…?」 口を開けてしまったことから、我慢していた変な声が漏れる。 声を我慢していたことに気づかれてしまった。 そこから唐突に噛んでいた唇を割って指が入り込んでくる。 突然のことに怖くなって薄く目を開く。

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