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第7話

更衣室から出るとそのまま言われていた通り休憩室へと向かう。 ノックして中へと入るとロイさんが資料片手にソファへ座っていた。何やら仕事をしていたらしい。 「遅くなりました。……昨日はすみませんでした。それと、制服もありがとうございます」 深々と頭を下げるとロイさんは手を止めて立ち上がる。 「体調はもういいのかな?顔色が少し悪そうだけど、薬は飲んでる?」 「はい」 昨日からアツシは軽めの抑制剤を飲んでいる。 やはり薬がよく効くタイプらしく、初めてのヒートとはいえほぼ何も無く過ごしている。 今後もそうとは限らないが、少なくとも今回に関してはヒートらしいヒートもないまま終わりそうだ。 むしろ薬で抑えられていてもう今回の分は終わったようなものだった。 その事にアツシは心の底からほっとしていた。 パンフレットに書いてあったのはなかなか刺激的な文面ばかりで少々怖気付いていたのだ。 せめてもう少し心の準備がほしい。 「……ところで話は変わるけど」 そう区切るとロイさんはそっとこちらへと近づきおもむろに手を伸ばし―― グイッとタートルネックの襟に指を突っ込んで引き寄せられた。 「どうして首輪付けてないのかな?」 「あー、その、慌てて出てきたのでつけ忘れて……」 つけ忘れたというより時間が無くて諦めて置いて来たのだが物は言いようである。 「ちゃんと付けなきゃダメだよ。……じゃないとここ、噛んじゃうかもしれないから」 「……っ、」 今まで感じたことの無い圧を感じてビクリと肩が揺れる。 何だかこの感じは身に覚えがある。 昨日、同じセリフでアツシを諌めた時と一緒なのだ。 あの時も首に手を掛けられてどうしようもない不安感のようなものを感じたが、今感じているのはそれよりもずっと強い。 体が強ばって手足が動かない。肺の奥が熱くて息がしづらい。 今なら分かるが、これがアルファ性の持つ圧なのだろう。 怖い。 アツシが何とか後ろへ下がろうとするとロイさんは首の後ろへと手を回して抑え込む。そしてアツシの首元へ唇を寄せ―― 「……い゛、…っ!!」 ぢゅっと音が聞こえそうな程強く吸い付いた。 それが終わるとベロりと吸い付いた所を舐める。 驚いて声も出せず、吸いつかれた場所を押さえてパクパクと口を動かした。 「な、……にして」 「ちゃんと付けて来ないからだよ。それとも、噛まれたかった?」 コテンと首を傾げられ、アツシはブンブンと音がしそうな程首を横に振った。 「そんなに振られると傷つくなぁ」と、ロイさんは思ってるんだが思ってないんだか分からない感情の読めない口調で呟く。 「そうそう、1つ提案があるんだけど」 「て、提案……?」 至近距離のままロイさんは世間話でもするように話を続ける。 「そ、提案。予備の首輪が1つ置いてあるんだけどそれ付ける?」 万が一の為アルファ用とオメガ用それぞれの抑制剤などが予備でここには置いてあるらしい。 その中に首輪も1つ置いてあるということだ。 話だけ聞けば好意で言っているように聞こえるが、さっきから圧が変わらない。 日に当たっている訳でもないのにジリジリと項が焼けるように熱い。 強制的にヒートを起こさせる程の圧ではないが、オメガに向けるには明らかに故意的だ。 これではまるで脅しだろう。 ロイさんの真意がつかめずなんと答えるか迷っているとクスクスと笑われる。 「そんな怖がらないでよ。大丈夫。ただお願い聞いて欲しいだけだから」 「お願いって……なんですか」 さっきからオウム返ししかしていない。 項が熱い。 「貸してあげる代わりに、これ僕の前では外して?」 「……それは」 この状況で頷けるわけがない。 アツシが言い淀むとふっ、と圧が無くなる。 「考えておいてね。お話はおしまい。さ、お仕事行ってらっしゃい」 「……失礼します」 にっこりと笑われ、アツシは戸惑いながらも項を押さえたまま頭を下げると休憩室から逃げるようにして出ていった。

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